VintageModern講座

  VintageModern物語  〜開発者へのインタビュー〜
VintageModern担当のエンジニア、スティーヴ・ドーソンに開発にまつわるインタビューをお送りします。スティーヴのミュージシャンとしての経験がアイデアを生み出し、音楽を愛でる心がVintageModernを誕生させました。その過程をタップリとお楽しみください。
    開発者の横顔
   
ヤマハミュージックトレーディング(以下「Y」):
まずはじめにプロフィールをおうかがいしたいのですが、生年月日と現在のポジションを教えてください。
Steve Dawson(以下「S」):はい。1959年10月17日の生まれで現在はマーシャル社のR&Dチームでアナログ・アンプの設計を担当しています。
Y:今までのマーシャル社でのキャリアは?

S:JTM45/100(1965年に発表されたマーシャル初の100Wアンプのリイシュー)、SUPER100JH(1966年に発表された100Wスタック。ジミ・ヘンドリックス・シグネイチャー(2006年にリイシュー[リンク先:シグネイチャーSUPER100JH])、そして今回のVintageModernシリーズです。
Y:スティーブさんはプロ・ギタリストとしても活動されていましたね?ギタリストとしてのキャリアは?
S:私は1970年、11歳の時にギターを始めました。プロとしてのキャリアはジ・アニマルズやテリー・ウィルソン・セレッサー(元フリーのポール・コゾフが結成したバック・ストリート・クロウラーのボーカリスト)での活動がそれにあたります。アニマルズ時代の1999年には東京と大阪で何回かプレイしているんですよ!
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    アンプ製作をはじめる
 

Y:この質問はVintageModernの開発コンセプトにも大きく関係していると思いますが、お好きなギタリストは?月並みながら重要な質問です。

S:ジミ・ヘンドリックスの「ヴードゥー・チャイル(スライト・リターン)」を聴いてすぐにギターを始めました。他にリッチー・ブラックモアやジミー・ペイジなど、いわゆるロックを作ってきたアイコン的なギタリストがやはり好きですね。レッド・ツェッペリンを観たことは決して一生忘れません。初めて行ったライブ・コンサートで、1972年11月、ニュー・キャッスル・シティ・ホールでのことでした。

Y:どのようにしてアンプ製作のノウハウを身につけたのですか?

S:1975年ごろ、アンプに対する好奇心が芽生え始め、ギター・テクやエンジニア、製造会社の人たちから何となく技術を習得しました。その後、単独で修理や改造、リストアなどの職に就きました。面倒を見たというか見てもらったというか、大勢のギター・テクの友人には今も感謝しています。マーシャルには2005年に入社しました。

Y:音楽やアンプ以外に興味のあることは?

S:ん〜、SF小説かな…?

<写真の解説>
アニマルズ時代のスティーヴ・ドーソン。オリジナル・ギタリストのヒルトン・ヴァレンタインはこの写真の撮影者であるため写っていない。ドイツ・ツアー時のどこかのバーで撮影。メンバーは左から・・・
ジム・ロッドフォード(b):アージェントのオリジナル・ベーシストで、その後アニマルズに加入する前キンクスに20年以上在籍した。そして、今はゾンビーズでプレイしている。
スティーヴ・ドーソン
デイヴ・ロウベリー(kb):
1965年、アラン・プライスに代わって加入し数々のヒットを世に送り出した。その後たくさんのアーティストと共演を果たしたが惜しまれつつ2003年に他界。
ジョン・スティール(ds):アニマルズのオリジナル・ドラマー。
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    ビンテージモダンの開発
 
Y:それでは、ビンテージモダンを開発するに至った経緯を教えて下さい。どうしてビンテージモダンの開発を思いついたのですか?
S:ビンテージ・モダンの発案は、私がそれ以前に手がけた2つのプロジェクト、JTM45/100のリイシューとジミ・ヘンドリックス・シグネイチャーSUPER100JH、そして私自身のいくつかのアイディアがきっかけなんです。
JTM45/100 SUPER100JH

Y:両方ともビンテージ・タイプのモデルですね?
S:はい。すでにマーシャルは、後にJVM410となるモデルの原型を打ち出していましたが、私と同世代のミュージシャンの多くは、シンプルで有機的なもの…プレイヤー自身のタッチや自然なダイナミクスによってコントロールできるようなアンプを求めていると感じていたんです。

Y:まさにビンテージ・マーシャルのよいところですね?
S:そうです。本物のビンテージ・トーンを重視しながら、70年代や80年代のハードロック・バンド特有の図太い歪み、そして自在なダイナミック・レンジをプラスしたアンプということです。

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    進化しなかったKT66搭載モデル
   

Y:ギタリストの憧れですね!そしてどうやってビンテージモダンのアイデアに昇華させたんでしょうか?
S:1959のようなEL34を使用したスーパー・リード・ヘッドは、長年の間により多くの機能やゲインを加えて進化・発展を遂げましたが、マーシャルの1号機に使用されたKT66を搭載したオリジナルのJTMシリーズはそのような改良が加えられたことがなく、進化が止まっていました。すなわち、あのトーンを手に入れられるのは貴重なオリジナルを持っている一部の有名ギタリストだけだったわけです。
Y:確かにKT66を搭載したモデルはラインアップにありませんでしたね。EL34か5881、EL84が標準でした。

S:私はそのようなビンテージのサウンドを出すアンプの潜在的な需要があると考えていました。そして正反対のJVMと同時期に発売し、その結果を世に問うことになったのです。
会社からゴーサインをもらった私は、いよいよこのプロジェクト、「クーガー(このプロジェクトの極秘コードネーム)」に直ちに着手しました。

KT66搭載モデル
 
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    プロトタイプ第1号機
   
S:プロトタイプの1号機はハンドワイヤリングの100Wアンプで、お世辞にも見た目には美しいと言えないものでした。
Y:なんかこの段階でもういい音が出そうですね?この1号機はどんな状態だったのでしょうか?
S:独立したプリアンプ・ゲインの「ボディ」や「ディテイル」、トーン・レンジのすべては段階で開発されていました。「ボディ」および「ディテイル」のシステムを導入したのは、あらゆるタイプのピックアップに合わせてプレイヤーがゲインを調節できるようにするためだったんです。
Y:昔の4インプットみたいな感覚?
S:私自身はストラトキャスターのプレイヤーで、クリアな高音に影響を及ぼさずに低域のゲインをブーストしたいとずっと思っていたんです。また、「ミッド・ブースト」を搭載するによってシングル・コイル・ピックアップにハムバッカー風の厚みのあるトーンを出せるようにしました。
Y:他の機能はもうこのプロトに搭載されていたんですか?
S:はい。バイパス可能なシリーズ・エフェクト・ループを取り入れ、マーシャルのマーケティング部からのリクエストでデジタル・リバーブを加えました。
 
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    「ダイナミック・レンジ」について
   
Y:「ダイナミック・レンジ」のアイデアはどこから発生しましたか?
S:開発の過程ですぐに明らかになったのは、このアンプがシングル・コイル・ピックアップ、または中程度の出力のハムバッカーを搭載したギターに最適だということでした。ギターのボリュームを下げた時には素晴らしいクリーン・サウンドを、ボリュームを上げた時にはクリーミーなオーバードライブをいとも簡単に出す驚くべき能力を持っていたのです。
ダイナミック・レンジ
Y:おっしゃる通りだと思います。
S:一方、高出力のハムバッカーを搭載したギターの場合、特にゲイン設定を高くするとギターのボリュームを抑えてもクリーンなサウンドを出すことが難しくなってしまう。
Y:それはやむを得ませんよね?
S:はい。そこでこの問題を解決するには、低いダイナミック・レンジのモードをつけ足し、高出力のピックアップを持つギターでもギターのボリュームを下げることによってクリーンなサウンドを得られるようにすることだったのです。
Y:だから「ダイナミック・レンジ」のモード間の音量差が大きいんですね?
S:その通り。そうでないと意味がない。でも、スイッチ回路を加え演奏中に2つの「ダイナミック・レンジ」を切り替えることも可能にしました。このようにして、どんなギターをつなげてもうまく機能するアンプの基礎ができたのです。
 
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    いざ製造段階に
 
Y:そしていよいよ製造ラインに乗せるわけですね?
S:その前に現代的な製造法で最近のシリーズと同程度のコストに抑えられるよう回路をプリント回路配線基板(PCB)に置き換える必要があります。プロトタイプの2号機は初のPCB版で、開発作業の大部分はノイズを最低限に抑え、組立とメンテナンスを容易にすることに費やされました。
この段階で、アンプの信頼性を確かめるために過酷なテストを繰り返します。このテストの直接的な結果として、熱放出に十分な余裕を持たせるため、トランスのサイズを大きくするようダグノール社(トランスのメーカー)に要請することになりました。
Y:トランスはアンプの最重要パーツですからね。スピーカーの選択はどのようにされたのですか?
S:この時点でSUPER100JHのためにセレッション社と共同開発したスピーカーがこの“新シリーズ”には最適だと判断しました。ビンテージ・モダンの基礎的なトーンは、SUPER100JHと同じルーツを持つものだからです。25WのG12Cグリーンバック・スピーカーです。古き良き60年代のG12Mと似たウォームでハーモニーのバランスがとれたトーンを実現します。
 
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    ルックスも斬新に!
   

Y:ルックスも新しいものですね?仕上げにもにも何か特別な思い入れがあったんですか?
S:もちろん!この新しいシリーズ特有のものにする必要がありました。高級感のある洗練されたイメージにしたいと思ったので、パープルとブラックのツートーンに仕上げたビンテージ・レバントとこれにマッチするフレット・クロスを業者にリクエストしました。

Y:このカバリングはもともとはパープルですね?それにブラックのインクを2度流したとか…。フレットクロスもタテ糸はブラックでヨコ糸はパープルとブラックが交互に織り込まれているんですね?

S:その通り。いくつかのサンプルを作った後、ようやく希望通りのものが出来上がりました。
Y:他にルックスでこだわったところは?
S:フロントパネルのインジケーターとダイナミック・レンジのLEDは、パープル、ブルー、ホワイトの3色に決めていました。パープルのインジケーターは新しいレバントとフレットクロスを引き立てます。ロー・ダイナミック・レンジのLEDをブルーにしたのは、ゲインがJTM45などのビンテージ・ブルース・アンプと似ていたからです。ハイ・ダイナミック・レンジ用はホワイトで高いゲインにした時の「白熱」したイメージを表しているんですよ。
 
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    名前の由来

Y:他にも従来のモデルとは異なった仕様が採用されていますね?
S:実は仕様を決定する時点ではもう新シリーズとしての名前が決定していたんです。「ビンテージモダン」という名前は、2つの異なるイメージを喚起しますでしょ?そのため、その他の装飾も新旧のハイブリッドとなったんです。ヘッドのフロント部分はフレット・クロスの代わりにレバントを使い、ゴールドのパイピング、クロームのナットを使ったインプット・ジャックソケット、ゴールドのキャップを端につけたストラップ・ハンドルはビンテージ時代を彷彿とさせます。幅広のシャーシ、ホワイト・ロゴ、ツヤ出しの黒いコーナーとグリルはモダンな個性を与えてくれますね。全体的な印象は典型的なマーシャルでありながら微妙な変化をつけているわけです。最後は通常とは違ったゴムつきのノブを使用することでした。

 
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    いよいよ完成!
 

Y:仕様も決定していよいよ完成ですね?
S:3つめにして最後のプロトタイプは、2号機のデバッグを徹底的に行って微調整を加ええ完成しました。この段階で、工場を訪ねてくるアーティストたちに試してもらい、意見をもらいました。非常に高い評価でした。シリーズの他のモデルも、100Wのプロトタイプと同様の方法で進めました。そして、2466、2266、2266C、425A、425Bというモデル番号がシリーズに割り当てられました。
Y:今度こそこれで製造に入るわけですね?
S:まだです。最後のステップは生産開始前の試運転を工場内で実施することです。この段階で製造工程に問題がないことを確認し、一定の品質を保つために完成品をテストする手順を定めます。そして発生した課題は、回路や機械構造を微調整して解決します。更に法律で定められた安全性とEMCの検定をパスして生産予定が立てられました。2006年9月のことです。
Y:今やビンテージモダンはたくさんのプロが使用していますが、マーケティングの関連にスティーブさんは関与しましたか?
S:取扱説明書とウェブサイトの他、パンフレットなどの文章を書きました。また、シリーズを評価してくれるマスコミへ発送する技術情報をまとめたりしました。かなりの量の文章を書きましたよ!(笑)

 
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    そして発表会が開催された
   

Y:そして2006年の10月には世界中のマーシャル関係者を集めて工場で盛大な発表会を催しましたね?
S:はい、あなたも来てくれましたね!あの時のプレゼンテーションで読んだ原稿が最後に書いた書類です。

Y:ダグ・アルドリッジのデモンストレーションは最高にカッコよかった!!
S:私はあれの1カ月ほど前に、2466を持ってホワイトスネイクのライブ会場へ行き、ダグ・アルドリッチに試してもらっていました。彼はそのサウンドをとても気に入ってくれて発表会に出席してほしいという依頼を快く引き受けてくれました、あの時もアメリカからわざわざ飛んできてくれたんです。おかげでイベントは大成功でした。
Y:はい、演奏といいあなたのスピーチといい本当に感動的でした。

S:このシリーズが日本のギタリストに支持されることを大いに期待しています。
ありがとう!

 
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