シグネチャー・ヒストリー – Part 1

一握りの幸運なアーティストが、自らの名を冠するMarshallシグネチャー・アンプを所有しています。それらのアンプの特徴と、それぞれがどのように生まれたのかを詳しく見ていきましょう。

Slash、Zakk Wylde、Kerry King、Jimi Hendrix、Randy Rhoads、Lemmy、Paul Weller、Yngwie Malmsteen、Dave Mustaine、Joe Satrianiの共通点は何でしょう。そうです。彼らは全員Marshallを演奏し、そして全員独自の演奏スタイルを持っています…しかしそれ以上に、彼らはそれぞれ独自のMarshallシグネチャー・アンプを持っているという共通点があります。

シグネチャー・アンプがオリジナルと異なるのはどのような点でしょう。Joe Satrianiは、「超個性的で、ブッ飛んでいて、プラグ・インするだけでインスピレーションが溢れてくる」と言います。このことを念頭に置いて、各シグネチャー・モデルが際立っている理由と、それぞれがどのようにして生まれたのか、過去のアーカイブを紐解いて掘り下げていきましょう。

Slash – 2555SL

“When Jim offered my own signature model to me I was obviously very surprised, humbled, flattered and excited – all at the same time. It’s one of the coolest things that’s ever happened to me.”

(JIMからシグネチャー・モデルのオファーを受けたとき、驚き、恐縮、嬉しさ、興奮を同時に感じたよ。これまでの人生で起こったことの中で最もクールなことの1つだったな。)

Slash, 1996

Marshallで初めてJim Marshall本人以外のサインがフロントに書かれたアンプ「2555SL」は1996年1月に発表されました。ベースとなったのは、当時Slashに何年も愛用されて既に代名詞となっていた「2555 Silver Jubilee」でしたが、一体このシグネチャー・アンプはどのような経緯で誕生に至ったのでしょうか。

このシグネチャー・アンプが生まれる1年前、Slashは手持ちの2555 Jubileeヘッドを使い果たす寸前の状態にありました。彼のコレクションのいくつかは熱狂的なファンによってライブ中に破壊されたり、容赦ないツアーを経て故障してしまったり、また移動中に行方不明になることもありました。この問題を解決するために、SlashはJim Marshallに相談したところ、JimはSlashのコレクションを補充し、かつSlashの象徴的なサウンドを再現したいファンを満足させるために、シグネチャー・アンプ3000台の限定販売を提案しました。

2555SL にSlashのトレードマークのスタイルを取り入れるべく、デザイン上の調整が数多く施されました。筐体はシルバーではなくブラックで覆われ、フロント・パネルには通常のミラー・タイプの代わりに、艶消しゴールドのタイプが取り付けられました。そしてパネルには「Snakepit」ロゴ、「JCM Slash Signature」というタイトル、さらにはJimのサインの真下にSlashのサインまでもが書かれていました。そしてパッケージの完成形として蛇柄のカバーと認定証も付属されました。

LISTEN TO SLASH'S SIGNATURE AMP

ZAKK WYLDE – JCM800 2203ZW

 

“IT’S AN EXTREME HONOUR TO HAVE MY NAME ON THE SAME AMP AS JIM MARSHALL. I’VE BEEN USING A JCM800 SINCE BEFORE I STARTED WITH OZZY. I HOPE THE 2203ZW KICKS YOUR ASS AS MUCH AS IT KICKS MINE. BLEED MARSHALL”

(JIM MARSHALLの名が刻まれたアンプに俺の名前も入るなんてこんなに名誉なことはない。俺はOZZYと活動を始める前から、JCM800を愛用していたからね。みんなもこの2203ZWで俺も喰らったケツを蹴っ飛ばされるような衝撃を味わってくれ。MARSHALLに血染めの祝福あれ)

Zakk Wylde, 2002

キャリアの初めからJCM800 2203を演奏していたということもあり、Zakk Wyldeのギター・サウンドはすぐに見分けがつきます。しかしZakkの2203のサウンドがその他大勢から突出しているのは、パワーアンプ部の真空管に英国で販売されているようなEL34ではなく、よりパワフルな6550を搭載しているという点にもあります。JimがZakkをシグネチャー・モデルの第2号ギタリストにしようと決定したとき、この真空管は欠かすことができませんでした。

これに加え、2203ZWはトゥルー・バイパスのFXループや様々な外観上の工夫も施されていました。フロント・パネルのブルズ・アイ・デザインやBlack Label Societyロゴから、ゴールドのパイピング、昔ながらのハンドル、全体に使用されている独特なフォントまで、すべてがユニークなスタイルでした。TVタイプのフレット・クロスと、Jim MarshallとZakk Wylde両名のサインで仕上げられた、まさにプロフェッショナルな佇まいで、当然のことながら600台すべてあっという間に売れていきました。

LISTEN TO ZAKK WYLDE'S SIGNATURE AMP

JIMI HENDRIX – SUPER 100JH

 

“MEETING JIM WAS BEYOND GROOVY FOR ME. IT WAS SUCH A RELIEF TO TALK TO SOMEONE WHO KNOWS AND CARES ABOUT SOUND. I LOVE MY MARSHALL AMPS, I AM NOTHING WITHOUT THEM.”

(JIMとの出会いはゴキゲンなんてもんじゃなかった。音についての知識があって、さらにそれを何より大切にしている人と話すのは本当にホッとするんだ。俺はMARSHALLのアンプが大好きだし、MARSHALLのアンプがあるから今の自分があるんだ)

Jimi Hendrix, 1969

James Marshall(=Jim Marshall)が初めてJames Marshall (=Jimi Hendrix)に会ったのは1966年のことで、Jim MarshallはHendrixを「間違いなく最大のアンバサダー」と表現していたということもあり、MarshallがJimi Hendrixに敬意を表してシグネチャー・アンプを製作することになったのは当然の結果と言えるでしょう。

2006年にようやくそれが実現しました。40年もの歴史的な関係があるからこそ、同じく40年前の、そしてJimiの代名詞とも言えるアンプを使うことに意味がありました。それがSuper 100です。

エンジニアたちは、1960年代当時にHendrixのサウンドを確立させたセットアップを、Super 100JHで再現したいと考えていました。Jimiが使用していたヘッドを調べたところ、オリジナルのKT66真空管とドレイク製トランスを搭載しているなど、純正品に極めて似ていることが明らかになりました。唯一調整されていたのは、トレブルとベースをわずかに強調するための回路の変更のみでした。

600台のシグネチャー・モデルは正確にコピーされ、驚くほど精緻なハンドワイヤード仕様で製造されました。 正面から見るとオリジナルのSuper 100と同じように見えますが、背面にはJimi Hendrixのロゴと彼のサインが書かれています。ヘッドに加えて、25WのCelestion G12Cを搭載し、標準の1982キャビネットよりもそれぞれ7”背の高い、アングルドの1982AJHおよびストレートの1982BJHスピーカー・キャビネットも製造しました。これにより、Jimiが使用したオリジナルのピンストライプ・スタックの正確な再現が完成しました。

Part2はRandy Rhoads、Lemmy、Kerry King、Paul Weller編です。