シグネチャー・ヒストリー – Part 2

一握りの幸運なアーティストが、自らの名を冠するMarshallシグネチャー・アンプを所有しています。それらのアンプの特徴と、それぞれがどのように生まれたのかを詳しく見ていきましょう。

Slash,、Zakk Wylde、Jimi Hendrixをフィーチャーした、Marshallシグネチャー・ヒストリーのPart 1はこちらから

これまでに3つの象徴的なシグネチャー・モデルを見てきましたが、ここからはさらにRandy Rhoads、Lemmy、Kerry King、Paul Wellerの4モデルを見ていきましょう。

RANDY RHOADS – 1959RR

"I DID SOMETHING YOU'LL APPRECIATE - I WENT TO THE MARSHALL FACTORY AND ORDERED MY OWN AMPS, I HAD THEM BEEFED UP AND MODIFIED THERE, I GOT THEM IN WHITE!"

Postcard from Randy to ex-Quiet Riot bandmate Kevin DuBrow

(君ならきっとこの凄さを分かってくれると思うけど、MARSHALLの工場に行って、自分専用のアンプを注文してきたよ、パワー・アップの改造もしてもらって、色は白なんだ!)
RandyからQuiet Riot時代の元バンド仲間Kevin DuBrowへ宛てたポストカードより

Randy RhoadsはOzzy Osbourneの80年代初頭の成功を支えただけでなく、誰が何度試みても再現できないようなそのユニークなサウンドで、ホットロッド(パーツの交換や改造を施した)Marshallのトレンドを扇動した人物の一人でもありました。

Randyの秘密兵器は、ブライトな「Plexi」スタイルのクランチと、アグレッシブなMarshallのクラッシュ感両方を特別な方法で1つにパッケージしたMarshall 1959 Super Leadでした。Randyがどのようにしてそのユニークなトーンを手に入れたかについての約30年に及ぶ論争を経て、2008年、Marshallはついに、Randyに敬意を表したシグネチャー・モデル1959RRのリリースを決定しました。1959RRは、Randyがライブやスタジオで使用したヘッドを正確に再現したものですが、一体何が特別なのでしょうか。

Marshallは1959RRの開発にあたり、幸運にもRandyのオリジナル・モデルを手に入れることができました。オリジナル・モデルからは、初段のECC83プリアンプ真空管をカスケード(直列)接続するように調整することでプリアンプの歪みを大幅にブーストしていたことがなんとか確認できました。両方のボリューム・コントロールを連携して機能させることでプリアンプの歪みを増加させられるのです。

1959RRの設計者は、このオリジナルの改造を施したブレッチリー工場のマーシャル技術者を特定し、当時実際に使用された技術の解明に成功しました。またRandyがMarshallチームにアンプを白でカバーさせていたことも受け、1959RRはオリジナルのサウンドと美的感覚のあらゆる要素を再現しました。

LISTEN TO RANDY RHOADS' SIGNATURE AMP

LEMMY – 1992LEM

 

"MARSHALLS ARE THE BEST. NO DISCUSSION. STING LIKE A BUTTERFLY, FLY LIKE A B-52, YOUR CHOICE. JIM MARSHALL IS MY FRIEND, AND I AM HIS."

(MARSHALLは最高だ。議論の余地はない。蝶のように刺すか、B-52のように飛ぶかはお前次第だ。JIM MARSHALLと俺は親友同士なんだ。)

Lemmy, 2003

Marshallアンプは無数のミュージシャンの代名詞となっていますが、中でも最もよく知られている一人が”Murder One”アンプを使うLemmyでしょう。そのため、2008年の1992LEMシグネチャー・モデルの発表は、世界中のMotörheadとMarshallのファンを興奮させました。

1992LEMは、元々1976年に製造されたLemmyのお気に入りのMurder One こと1992 Super Bassヘッドを正確に再現したモデルです。上述のRandy Rhoadsアンプと同様に、Murder Oneも、それが特別なものになりえた理由を明らかにするためにMarshallは調査しました。その結果、Murder Oneは4本のEL34真空管で駆動する、音色の幅を拡張するためにほんの少しだけ変更を加えただけの、ほぼ標準的なコンポーネントを使用したアンプであることが分かりました。

1992LEMとMurder Oneのわずかな違いは、プリアンプのフィードバックを防ぐために真空管ベースに抵抗が追加されたことと、ハムバランサ―・コントロールの追加でした。オリジナルへの忠実さは、デザイン面でも発揮されました。1976年のモデルは、上から黒く塗られた赤いビニールのカバリングが特徴で、コーナーガードが外れてしまった箇所は元の赤い色が露出していました。2008年のモデルでは、Murder Oneの外観そのものを再現すべく、2つの華やかな木製の記章とともに赤いコーナーガードが追加されました。

幸運な1992LEMオーナーは、LemmyとJim Marshallのサイン入り所有権証明書と、3枚のLemmyのギターピックも併せて手に入れました。

KERRY KING – 2203KK

 

"I USE MARSHALL BECAUSE I DEMAND THE BEST, AND NOTHING ELSE COMES CLOSE. NOBODY TOUCHES IT. THE 2203KK PUNCHES LIKE MIKE TYSON IN HIS PRIME, AND I’M SURE IT’LL KICK YOUR ASS AS MUCH AS IT KICKS MINE."

(俺は最高を求めるからMARSHALLを使うわけであって、他のいかなるアンプも比べものにならない。2203KKの破壊力はまるで全盛期のMIKE TYSONみたいで、これを使う者は皆必ず俺が受けたのと同じくらいの衝撃を受けるはずだ。)

Kerry King, 2007

Slayerは、その独自のトーンで世界中に知られ、スラッシュ・メタルというジャンルの確立に貢献した存在です。そのSlayerサウンドの核となるのが、Kerry KingのJCM800 2203の咆哮であり、具体的には「Beast」と名付けられた彼のお気に入りの2203ヘッドのサウンドでした。

Beastが他のJCM800 2203と異なるのは、前段で中域をブーストする独自のEQと非常に優れたノイズゲートです。これは彼の演奏の暴虐性を強調するための一瞬の沈黙を作り出すためのキーとなっています。Kerry KingはBeastについて、「悪魔が手を差し伸べたヘッド」と表現しています。

シグネチャー・モデル2203KKの場合も、Marshallはオリジナルアンプを借り、すべての要素をチェックし、どのような改造がなされていたかを明らかにしました。驚いたことに、Beastは100%工場出荷時の状態であり、その独特なサウンドは80年代のいくつかのコンポーネントの経年変化によるものでした。

2203KKでこれを正確に再現するために、MarshallはKT88出力管を使用し、前面のパネルの「ASSAULT」ノブから制御できるEQカーブを追加しました。 その上、高品質のノイズゲート、独特のケルト文字、彼のタトゥーをモデルにしたトライバルの炎柄も追加されました。

LISTEN TO KERRY KING'S SIGNATURE AMP

PAUL WELLER - LEAD AND BASS 1987X-PW

 

"I CAN MAKE MY MARSHALL GO FROM A SCREAMING LOUD TONE TO A BEAUTIFUL, CLEAN, WARM, BASSY SOUND WITH A MERE FLICK OF A PICK-UP SWITCH."

(俺のMARSHALLは叫ぶような爆音から、美しく、クリーンで、暖かく、低音豊かなサウンドまで、ピックアップ・スイッチ操作一つで自由自在なんだ)

Paul Weller, 2009

ザ・ジャム、スタイル・カウンシル、そしてソロ活動でも有名なポール・ウェラーは、英国の権威であると同時にトレンドセッターでもあります。彼がマーシャル・アンプを使用するのは当然のことですが、そのアンプといえば、かなりレアなLead & Bass 2100が挙げられます。70年代に短期間だけ通信販売で入手できたこの50Wコンボは、現在では非常に人気があります。

彼とのパートナーシップとPaul Wellerの50歳の誕生日を祝うために、Jim Marshallは、オリジナルアンプの回路図に基づいてシグネチャー・アンプの限定生産を行うことにしました。この限定生産の最大の特徴は、Mod-Fatherのスタイルと完璧に結び付いた白いビニールのカバリングと英国空軍の円形模様でした。

1987X-PWには証明書が付属しており、このアンプの収益は、PaulとJimが情熱を注いできたチャリティ「チャイルドライン」に全額寄付されました。

LISTEN TO PAUL WELLER'S SIGNATURE AMP

Part3はDave Mustaine、Yngwie Malmsteen、Joe Satriani、Slash(再び)編です。