シグネチャー・ヒストリー – Part 3

一握りの幸運なアーティストが、自らの名を冠するMarshallシグネチャー・アンプを所有しています。それらのアンプの特徴と、それぞれがどのように生まれたのかを詳しく見ていきましょう。

Marshallシグネチャー・アンプを振り返る最終章では、Dave Mustain、Yngwie Malmsteen、Joe Satriani、そして再びSlash・・・のユニークなモデルを見ていきましょう。そう、Slashは、2つのシグネチャー・アンプを持つ、Marshallの歴史の中でも一際大きな存在なのです。

まだの方は、Marshallシグネチャー・ヒストリー Part 1Part 2もご覧ください。

JOE SATRIANI – JVM410HJS

“I CAN HONESTLY SAY THAT I’VE NEVER HAD THIS MUCH FUN OR DERIVED THIS MUCH INSPIRATION FROM AN AMP BEFORE. IT OFFERS ME TOTAL ROCK ‘N’ ROLL FREEDOM.”

(正直今までアンプでこんなに楽しんだことも、これほど多くのインスピレーションを得たことも一度もないよ。このアンプが僕に完全なロックンロールの自由をくれたのさ。)

Joe Satriani, 2012

Joe SatrianiとMarshallは、彼の音楽キャリアの早い段階から手を取り合ってきました。80年代半ばの彼の初期のアルバムにおいて特にわかりやすいMarshallサウンドは、Satrianiを新世代ロックにおけるキーパーソンたらしめる重要な要素だったのです。しかし、Satrianiは2008年にスーパーグループChickenfootを結成して「より大きく、よりオーガニックで、より完全なサウンド」を求めるようになるまでは、「しばらくの間、このブランド(=Marshall)から"距離を置いていた"」ようです。
やがて彼はMarshallと再び出会い、それ以来JVMはJoeの代名詞となりました。

数年後、SatrianiはJVMを使ったツアーとレコーディングのおかげで、JVMのことは隅から隅まで知るようになっていました。また彼にはアンプを改善するためのアイデアがあり、そして彼はそれを「すでに優れたアンプを、さらに大きく、大胆に、パンチを効かせ、よりダイナミックなものにする」と表現しました。 これを念頭に置いて、Joe SatrianiとJVMの設計者であるSantiago Alvarezは、Satriani独自のシグネチャー・アンプJVM410JHSの開発に着手しました。

3年にわたる試作と実戦テストを経て、JVM410HJSは2012年にリリースされました。ブラックと(Satrianiが所有する80年代のオリジナル6100アンプと同じ)ブルーの2色が用意されたこのシグネチャー・モデルでは、各チャンネルのリバーブ・コントロールがノイズゲートに変更されています。さらに、EQはオリジナル・モデルのメタル・トーンからわずかに離れ、よりオーガニックなロック・サウンドに調整されました。さらに、JVM410HJSはスタンダードな1960LEADキャビネットと究極のペアリングとなるように特別なボイシングが施されました。

LISTEN TO JOE SATRIANI'S SIGNATURE AMP

DAVE MUSTAINE – 1960DM

 

“IT’S ONE THING TO STAND IN FRONT OF THE 1960DM CABINETS. IT’S ANOTHER TO HAVE THEM STAND BESIDE YOU. I AM NOT THE BIGGEST, BUT I AM NO DOUBT THE PROUDEST ENDORSER MARSHALL HAS EVER HAD.”

(1960DMキャビネットの前に立つことと、おまえらの隣に並ばせるのは全く別の話だ。俺はMARSHALL史上最大ではないが、間違いなく最も誇りを持っているエンドーサーだと自負している。)

Dave Mustaine, 2009

キャビネットといえば、Dave MustaineはMarshallキャビネットのシグネチャー・モデルを持つ史上初のアーティストとなりました。Megadethのフロントマンであり、Metallicaのオリジナル・ギタリストでもあるMustaineは、メタルの帝王と呼ぶに相応しい存在であり、ヘヴィに歪んだギターサウンドをもっとも早くから牽引してきたギタリストの一人です。

キャビネット自体に関していえば、アングルドタイプの1960ADMとストレートの1960BDMの外観は素晴らしいデザインを誇っています。漆黒を纏い、フレットクロス代わりの頑丈なダイヤモンドパンチの鉄格子が自慢のこのキャビネットは、Marshallの象徴的なスタイルが猛獣の餌となったかのように、Mustaineのトーンを完全に捉える攻撃的でヘヴィ・デューティなスタックをつくりあげます。最後の仕上げとして、各キャビネットの下隅にはJim MarshallとDave Mustaineの両方のサインが記された特別な銘板があしらわれています。

そのトーンについては、1960DMキャビネットには4基の70w Celestion Vintage 30 カスタム・スピーカーが搭載され、密閉構造が施されています。この密閉構造により、Daveの特性に適した密度の濃いアグレッシブなサウンドを提供します。このキャビネットには、Mustaine自身のDVD、証明書、ユニークなアートワークが施された厚手のダストカバーが付属しています。

LISTEN TO DAVE MUSTAINE'S SIGNATURE AMP

YNGWIE MALMSTEEN – YJM100

 

“I CAN’T IMAGINE A MORE COMPLETE AMP. VINTAGE LOOK AND SOUND, WITH INCREDIBLE VERSATILITY AND FEATURES. THIS AMP IS TRULY A MASTERPIECE.”

Yngwie Malmsteenは、80年代半ばに、ヘヴィなロックへの愛とエモーショナルな演奏のコンビネーションを衝撃的なネオ・クラシカルなプレイスタイルに融合したことで、その名を知られるようになりました。真のギター・ヒーローであるYngwieは、世界中で賞賛されていますが、その素晴らしい演奏と同じくらいMarshallへの愛着でも知られています。

Yngwie Malmsteen, 2010

Yngwie Malmsteenは、80年代半ばに、ヘヴィなロックへの愛とエモーショナルな演奏のコンビネーションを衝撃的なネオ・クラシカルなプレイスタイルに融合したことで、その名を知られるようになりました。真のギター・ヒーローであるYngwieは、世界中で賞賛されていますが、その素晴らしい演奏と同じくらいMarshallへの愛着でも知られています。

Malmsteenは初期の頃から、ステージ上をMarshallアンプで埋め尽くすことで有名でした。Yngwie Malmsteen live "でイメージ検索すると、3つのテーマ:豪華な衣装、大きな髪、そしてMarshallアンプが繰り返し出てきます。Jim MarshallはYngwieの惜しみないMarshall愛に敬意を表し、彼自身のシグネチャー・アンプであるYJM100を製作することにしました。

YJM100は一見すると100wの1959 Plexiにそっくりですが、よく見るとフロントのJTMまたはJMPの文字がYJMに置き換えられているのがわかります。バックに目を移すと更に多くの機能、ブースター、ノイズゲート、デジタルリバーブ、FXループがあり、そしてそれらはすべてフットスイッチでコントロールできます。さらに、パワーを50Wまで下げることができ、真空管の不具合を示すインジケーターやセルフ・バイアス機能も搭載しています。YJM100にはYngwieが愛するもう一つの存在:Ferrariにインスパイアされた赤いダストカバーが付属し、その存在が完成します。

LISTEN TO YNGWIE MALMSTEEN'S SIGNATURE AMP

SLASH – AFD100

 

“IT’S THE BEST NEW MARSHALL I’VE EVER USED. IT’S AMAZINGLY LINEAR AND HAS A NICE, SMOOTH, WARM-BUT-AGGRESSIVE SOUND.”

(今まで使ってきた新しいマーシャルの中で一番いい。驚くほどリニアで、滑らかで暖かくもアグレッシブなサウンドだ)

Slash, 2011

繰り返しになりますが、Slashは2つのMarshallシグネチャー・アンプを有する唯一のアーティストです。1台目は、このシリーズのPart 1で取り上げた2555SLです。そして2台目がこのAFD100で、このモデルは誰もがMarshallとLes Paulの組み合わせで真似したくなるロック・サウンドを生み出した、Guns N' RosesのAppetite For Destructionから名付けられました。

このアルバムのレコーディングでは、Slashはレンタルしたモディファイの100wのSuper Leadを使用したとされていますが、Slash自身はこの機材について"ある程度は改造されていたが、誰がどのように改造したかは分からない。正直なところ、これ以上覚えていると言えば嘘になる。"と曖昧な記憶しか持っていませんでした。つまり、あのサウンドを再現するシグネチャー・モデルを作るには、ゼロからのスタートとなることを意味していました。2010年初頭のAFD100の発表後、その音色を再現し、アンプを製作するまでの道のりを紹介する専用ウェブサイトが開設されました。

トーンを正しく再現するための鍵は、Appetite For Destructionのマスター・テープにアクセスすることでした。そこからMarshallのエンジニアはSlashのギタートーンを分離させ、細部まで研究し、サウンドを一から作り直したのです。完成したアンプには、#34とAFDの2つのモードがありました。#34はSlashが愛用するJCM800 2203をベースにしており、AFDモードは伝説となっている先述のレンタル・アンプをモデルにして更にゲインを追加したものでした。

AFD100の特徴は、Silver Jubileeのようにシルバーのフロントパネルを採用していることです。また、6550パワー管、FXループ、オートバイアス機能に加え、エレクトロニック・パワーアッテネーターと呼ばれる特別な機能を備えています。この機能により、最大出力100Wのアンプを0.1Wまで音色を損なわずに下げられるので、場所を選ばず使用することができます。

AFD100は2300台しか製造されませんでしたが、さらに希少なのは僅か100台のAFD100SCEバージョンです。このモデルは同じサウンドと機能ですが、更に・・・鏡面仕上げのフロントとリードパネル、黒蛇柄のカバリング、シルバーのパイピング、鏡面仕上げの通気パネル、スラッシュ自身のサイン入りリアプレート、フライトケース、ダストカバー、開発に関わったMarshallスタッフ(とJim!)のサイン入り製造証明書、さらに個別のナンバー入りAFD100ワークシャツも付属していました。Phew!

LISTEN TO SLASH'S SIGNATURE AMP